太もも ダイエットの途中過程

成人における肥満と糖尿病の関係については、数々の大規模調査から、さまざまな事実がわかってきている。
たとえば、ある調査によれば、成人で次の条件をすべて満たす人は、そうでない人にくらべ、糖尿病になる割合が九〇パーセントも少ないという。
食物繊維が多い食品をとっている、多価不飽和脂肪酸が多く、飽和脂肪酸が少ない食品をとっている、ダリセミック指数の低い食品をとっている、週七時間以上、運動をしている、タバコを吸わない、ほどほどのアルコールを毎日飲んでいるというこれら諸条件の中で、糖尿病の発病にもっとも深くかかわっているのは、やはり肥満であろう。肥満さえなければ、2塑糖尿病の約六〇パーセントは予防できるのである。
このデータは、実は中年の女性を対象に調べたものである。従来の医学データは、ほとんどが男性を対象としたものであったが、それは男性の方が病気になくやすく、調査がしやすかったからである。女性だけを対象にしたデータはめずらしく、大変、貴重である。ただし結論的には、2型糖尿病の発生に関して男女差はほとんどない。
糖尿病とならんで肥満に関係の深い病気は、動脈硬化症である。
動脈硬化症は、血管の壁にコレステロールがたまく、血流が途絶えてしまう病気の総称である。高脂血症、高血圧症、糖尿病などが直接の原因となるが、発病を促進する因子の一つが肥満となっている。
貴近、その動脈硬化症も、すでに子どものころからはじまっていることがわかってきた。その傾向は特に男児に顕著で、かつBMIの値に比例している。女児の場合は比較的、関係が希薄であるが、それでも学童期に肥満があると、三五歳をすぎたあたりから動脈硬化症がおこくやすくなる。つまり男女で発病までの時間差はあるものの、学童期の肥満が、成
人になってから動脈硬化症をおこす重大な誘因となっているのである。
ちなみにコレステロールの値は、肥満とほとんど関係がない。子どもの高コレステロール血症はあまり重要でなく、肥満そのものが問題なのである。
まだ不明な点は多いが、子どものときの肥満が将来の動脈硬化症の発症に深くかかわっていることは間違いなく、子どもから高齢者にいたるまで、生涯をつうじての予防対策が必要ということになる。
肥満による心不全は女性に多い。
心肥大と、それにつづく心不全も、肥満によっておこる健康障害の一つであることが証明されている。
心筋細胞は、負荷が大きくなると一個一個が肥大化していく。その状態が進行してくると、
レントゲンや超音波検査などでも容易にみつかるようになり、心肥大と診断されることになる。
人間ドックなどで発見される心肥大の多くも、肥満や高血圧などによっておこるものである。
心不全は、肥大がこうじてポンプとしての機能を失いかけた状態をさす。症状としては息切れ、せき、血疾、動悼、冷や汗、肺浮腫などである。特に息切れは特徴的で、仰向けに寝ているよりも上半身をおこしている方が楽だったりする。
心不全は、体重に比例しておこりやすくなる。特に女性では、体重が正常な人
にくらべ、「体重オーバー」で一・五倍、「肥満)」では二倍も多いという欧米の統計がある。
一方、男性では、「正常」の人にくらべ、「体重オーバー」で一・二倍、「肥満」で一・九倍程度とやや少なめである。ほとんどの病気は男性に多いが、肥満によっておこる心不全だけは女性の方に多いことになる。
このデータは、医学雑誌にのっていたものである。繰り替えしのべてきたように、自然現象では「原因か結果か」を判断するのがきわめて難しい。その雑誌の同じ号には、
「肥満が心不全の原因とはいえない」という反論もいっしょに掲載されていた。反論の主旨は、「太っていることが糖尿病、高血圧症、高脂血症などをおこし、それらが結果的に心不全につながっただけかもしれない」「心不全が先にあって、運動ができずに太っただけかもしれない」「心不全は判定が難しく、データそのものに疑問がある」というものであった。
一方、心不全の患者だけを集めてくらべると、やせている人よく太っている人の方が、心不全からの回復が早いというデータもある。
「太ると心不全になくやすいのか?」「心不全になったから太るのか?」など、わからないことも多い。
心電図でわかる心臓の負担前述のように、肥満によって心臓にかかる負担を心電図でキャッチできることもある。従来から、心電図に少しでも変化が認められると、病気が進行しているものとみなされ、薬による治療が行われてきた。ところが、そのような状態になってさえ、減量するだけで心電図を正常にもどせることがある。
最近、脂肪肝と診断される人が急にふえてきた。
少し前までは、簡単に診断ができなかった病気である。したがって、実数がほんとうに、ふえたのかどうかはわからない。少なくともみかけの患者数がふえたのは、前述のように診断技術が進歩して人間ドックなどで簡単にみつかるようになったからである。
原因は二つあると考えられている。一つは肥満で、もう一つがアルコールの飲みすぎである。
ただし最近になって、「ほんとうに肥満だけで脂肪肝がおこるのか疑問がある」という意見もだされている。
体重と脂肪肝の関係を調べる研究では、アルコールの影響をとりのぞくために、常習的な飲酒者を除外するのが普通となっている。ところが発表されたデータをよく調べてみると、多少は飲んでいるという人が必ず含まれてしまっているのである。脂肪肝をおこしやすく、かつアルコールをまったく飲んでいない人を探すのが難しかったものと推測される。
結局、肥満が原因で脂肪肝がおこると結論したデータも、よく調べてみるとアルコールの影響が否定しきれていない。ただ太っているという理由だけで脂肪肝がおこるものかどうかは、まだはっきりしないのである。
また脂肪肝が、将来、どのような病気をもたらすのかについても、よくわかっていない。
眠っている人の呼吸が突然とまく、死んだかと思うことがある。これは誰にでもおこりうる。
健康な現象で、通常は放置してかまわない。ところがその回数が多くなると、いろいろ問題がおこるようになる。たとえば目覚めたあと、異常な疲れが残り、ときには仕事中、意識を失ったように居眠りをはじめることがある。
睡眠中に呼吸がとまることが一時間に五回以上あり、かつ昼間も体調が悪い、という状態を睡眠時無呼吸症候群とよぶ。原因はさまざまで、かなり太っている人に多い。肥満のために咽喉部が狭くなく、また胸部が圧迫されるためにおこるのである。
欧米では三〇~六〇歳の女性の二パーセントで、また男性では四パーセントでこの状態が認められている。日本では、話題になってからの日が浅いこともあって正確な統計はないが、該当する人がかなりいるものと思われる。
車の運転中に正面衝突事故をおこす確率が三倍も高くなるというデータもある。これについては、車の運転をしないようにするしか打つべき手はない。また電車の運転手が業務中に居眠りをして事故をおこしたという事件もあった。
睡眠時無呼吸症候群と病気との関係については、まだ本格的な調査が行われていないが、心筋梗塞や脳卒中になる割合が高いとのデータもある。
変形性膝関節症も、肥満によっておこる障害の一つとして忘れることができない。
ひざにかぎらず、骨と骨が接する面には薄い軟骨が必ずある。軟骨は、生涯にわたって徐々
にすりへっていき、再生することがない。いくら運動で体をきたえても、この部分だけは丈夫なままでいることがないのである。

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